40歳、ついに公式戦の先発マウンドに立つ。
お笑い芸人・杉浦双亮の挑戦記〈20〉
トライアウトから9カ月、愛媛マンダリンパイレーツのサブロク杉浦に訪れた最高の一日。生まれた責任感。
監督がくれた「プレゼント」
40歳で迎えた「プロ野球」への挑戦。
トライアウトから数えれば、9カ月が過ぎたのだけれど短い時間のなかで本当にいろいろなことがあった。野球の面白さを再認識したり、サポートしてくれる人たちへの感謝を知ったり、出場機会がない日々に悶々としたり、実力不足や芸能との二刀流の難しさに悩んだり……。あっという間だったけれど、良いこと、悪いことを含めて、それくらい充実していた日々だったのだと思う。
そして先日、僕にとってこの9カ月のなかで一番と言っていいほどの、嬉しい出来事があった。
なんと先発のマウンドを任せてもらえることが決まったのだ。
試合は愛媛マンダリンパイレーツ主催、坊ちゃんスタジアムで行われる後期日程の8月20日の土曜日、対香川オリーブガイナーズ。オリーブガイナーズにはこれまで二度登板している。一度は悔しいマウンド、1アウトも取れずに降板し、もう一度は2回を投げて1失点だった。リベンジを果たすために、とてもうれしい相手でもあった。
思い返せば、8月にマウンドに上った記憶がない。高校時代、控え投手だった僕は甲子園のマウンドに上がることはなかったし、20年続けた草野球リーグも夏は休みだった。
初先発が、夏のマウンド。世の中は若い球児たちが躍動する甲子園の準決勝で大盛り上がりだと思うけれど、20歳以上離れた「球児」だって負けてられない、そう思っている。
唯一の不安は……16時という変則の試合開始のため夏の暑さに体力が持つかどうか。ここは球児には勝てないので、いまからしっかり対策をしていきたい。
ただそんなふうに考えていくと、このマウンドは、ただ嬉しいという言葉だけですませることができるものではない、とも感じた。
前期日程だけの成績を見れば、僕は決してチームに貢献したとはいえない。チームが前期日程優勝を決めた中で、僕は不安定な投球を続けてしまった。
それでも弓岡監督は僕に先発のマウンドを「プレゼント」してくれたのだ。
「プレゼント」と書いたのは、実際弓岡監督からそう言われたから。
中断期間のいま、チームは毎日朝から練習をするのだけれど、グラウンドに着くとまず監督、コーチが控えている部屋に行く。挨拶と、部屋にその日の練習がすべて書いてあるホワイトボードがあるから、それを確認するためだ。
数日前、「おはようございます」と言っていつものように部屋に入ると(部屋と言っても監督室とかいった立派なものではないのだけれど)、監督が突如、「8月20日。お前に、プレゼントするよ」と言った。
なぜだろう、すぐに先発のことだと分かった。
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